精神科医・産業医・皮膚科医 そたにんのブログ
イライラ、焦燥感、不安、不眠に処方される漢方薬 抑肝散・抑肝散陳皮半夏についてです。
抑肝散はもともとは小児を対象にした漢方製剤で、保険適応病名は神経症、不眠症、小児夜なき、小児疳症です。
保険適応外ですが、認知症の精神・行動障害(BPSD)に対する有効性についての報告が多く、近年ではあらゆる年齢層に広く使われています。
お母さんとお子さんに母児同服をおすすめすることもあります。母児同服は、子どもの症状と母の情緒が関係しているときに、母と子どもに同じ薬を処方する、漢方では昔から行われている方法です。
年齢、体重、症状を考慮して投与量を決めますが、屯用でも効果を実感している漢方薬です。
患者さんの証を考慮して、中間証であれば抑肝散を、虚証寄りであれば抑肝散陳皮半夏を投与します。抑肝散は腹直筋に緊張がある例に用いると効果が得られやすいことが知られています。消化器症状の出現があれば抑肝散から抑肝散陳皮半夏に変更して処方するようにしています。
薬理作用として、セロトニン伝達系の調整作用やグルタミン毒性緩和作用を有します。また、抑肝散陳皮半夏ではアセチルコリン神経伝達系の賦活作用や、脳内のドパミンおよびノルアドレナリンの増加作用も報告されています。構成生薬の釣藤鈎はアルツハイマー病の原因物質であるアミロイドβタンパクの凝集を抑制する作用が報告されています。
重大な副作用としては間質性肺炎、偽アルドステロン症(甘草)、ミオパシー、肝機能障害等で、それらを疑うような症状が出現した場合には内服中止をします。

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